昔はアトピー性皮膚炎という病気はなかった

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P1120637昔はアトピー患者はいなかったそうです。

ただ、昔と言ってもそれほど大昔のことではなく、日本では1960年代頃までアトピー患者はいませんでした。なぜ、急にアトピー患者がこれほど増えてきたのでしょうか。

人のケースであっても、なぜ近年になって急速にアトピー患者が増えてきたのか?、そのあたりの要因がわかれば、犬のアトピー症改善に効く療法がわかるのではないかと思い、少し調べてみました。

日本でのアトピー患者はかなり増加している

アトピーは日本でも近年急速に増加している病気ですが、厚生労働省発表では、昭和62年に22万4千人だった患者数が平成23年には36万9千人に増えています。

実に25年間で1.6倍にも膨れ上がっています。

残念ながらワンちゃんの場合では信頼できる統計データがなかったのですが、犬の場合でも増えているとのデータがいくつかありました。

アトピー(atopy)の語源

アトピーという言葉はアメリカのコカとクッケという二人の学者が1923年に作った造語であり、ギリシャ語のatopos(場所が不特定)、atopia(場違いな、とらえどころのない)が語源とされています。

英語では未知な病気(strange disease)という意味で元々は花粉症、アレルギー性鼻炎、気管支喘息などの症状全般に対する言葉でした。

アトピーは世界でも1900年以前にはあまり認識されていなかった病気であり、まさに近代病と言えます。

ちなみにatopiaというのはユートピアutopia(理想郷)と類似の言葉だそうです。

aとuの違いだけでかなり印象が変わってしまうのは、皮肉な感じです。utopiaの元々の意味は”この世に存在しないもの” = 理想郷 なので、意味合いとしてはあながち遠くはないような気がします。

アトピーの要因

ここ最近の科学技術の発達により、人間やワンちゃんの住む環境や食生活が劇的に変化を遂げています。

このような状況の中、アトピーが増えている要因は1つではなく、様々な要因が複合的に絡み合っているようです。

調べた範囲で、その要因をいくつかピックアップしてみます。

寄生虫の駆除(清潔すぎる環境)

戦前の日本では、非常に多くの人たちが腸内に寄生虫を持っていました。

特に日本では戦後になってから、サナダムシなどの寄生虫は駆除すべきものとして厚生労働省の指導のもと、徹底的に対策を行っていきました。

私を含め、ほとんどの人は小学生のときにぎょう虫検査をやった記憶があるかと思います。

この徹底的な政府の対策の結果、私たちの食生活もとても衛生的になり、ほとんどの寄生虫が駆除されました。

ただ、最近の研究では、この寄生虫が分泌する物質がアレルギーを抑制することがわかってきたのです。

皮肉なことに、昔の人はお腹の中に寄生虫を飼うことで、アレルギー反応を抑えることができていたのです。今では、逆に寄生虫をわざと寄生させることで、アレルギー対策を行う治療法もあるぐらいです。

《参考記事》 幼いときに犬を飼っていると喘息になり難いという研究結果から思うこと

食事の欧米化

戦後の日本ではアメリカへの憧れからか、食事も洋食を多くとるようになり、菜食よりは肉食を好む傾向が強くなりました。

その結果、普段からお肉を多く摂るようになったのですが、動物性タンパク質は腸内で悪玉菌のエサとなり、悪玉菌を増やす原因となります。

また、昔の日本人が普段食べていたお味噌やお漬物など、日本独自の発酵食品をあまり食べなくなったことも日本人の腸内環境が悪化している原因の一つです。

発酵食品には、善玉菌を増やす効果があり、日本食を好んで食べる人の腸内環境はとても良いことが分かってきています。

元々肉食動物であった犬の場合、栄養バランスとして、人に比べてお肉(タンパク質)を多く摂る必要があるのですが、これが腸内環境を悪化させる原因となっているのです。

腸内環境が悪化すると、腸内で毒素や腐敗ガスが発生し、アトピー症状が悪化する原因となるのです。

《参考記事》 腸内フローラのバランスをとってアトピー、アレルギーを改善する

油の取り過ぎ

先の食事の欧米化にも関係するのですが、近年では食用油が大量生産されるようになったため、油の価格が劇的に安くなり、一般家庭でも普通に食べられるようになりました。

ただ、大量に生産された油には、アレルギー反応を引き起こす物質が含まれている「ω-6脂肪酸系」が多く含まれているのです。

このことが、アトピーを悪化させる要因となりました。

《参考記事》 えごま油はアトピーに効く、アレルギー抑制効果で花粉症も大丈夫

肌の洗いすぎ

昔では考えられなかったことだと思うのですが、潔癖症の人がかなり増えています。外から帰ってくると何十分も手を洗ったり、お風呂に1時間以上入らないと気が済まない人たちです。

肌を洗いすぎると皮膚表面に付着している皮膚常在細菌まで洗い落としてしまうため、皮膚のバリア機能が低下してアレルゲンが侵入し易くなります。

これ以外にも、シックハウス病の原因である環境ホルモン(内分泌損傷化学物質)やごみ焼却時に発生するダイオキシンなどの大量の化学物質が身の回りに溢れかえっており、アトピーにとって悪い条件が重なっているように思います。