犬は「かぜ」を引かない、とよく言われていますが、本当でしょうか。
確かに犬の場合、外で飼っていても冬の寒さで風邪を引いたということはあまり聞きません。
うちの場合でも、家族みんなが風邪を引いても「もなか」にはうつることもなく、「もなか」が鼻水を垂らして、クシャン、クシャンとやっているところをほとんど見たこともありません。
ただ、「もなか」の場合はイネ科の花粉症みたいなので、花粉の季節になると鼻水を垂らしていることはよくありますが。。。。
そもそも「かぜ」とは何なのでしょうか。
人間の場合でもそうなのですが「かぜ」という病名はありません。普段、みなさんがよく引く風邪とはどんな病気なのでしょうか。
風邪は正式には「感冒」とも言われ、急性の呼吸器系の病気のことです。
症状としては、熱が出たり、喉が腫れて咳き込む、鼻水が出るなど、みなさんがよくご存じの症状をまとめて「かぜ」と言われます。
特に空気が乾燥すると、呼吸器官の粘膜によるウィルスや細菌への抵抗力が弱くなり、感染しやすくなります。医学的には風邪症候群と言われるもので、鼻やのどの炎症だけでなく、肺や気管支の炎症を含む疾患の総称です。
人間の場合、風邪の原因の90%はウィルス性のものです。
季節に関係なく鼻かぜを引き起こす、ライノウィルスやコロナウィルス、
夏場を中心に腹痛、下痢などおなかの症状を伴うエンテロウィルス、
春や秋のかぜに多いアデノウィルス、パラインフルエンザウィルス、
冬場に多く重症化すると肺炎を引き起こすインフルエンザウィルスなどなど、
色々な種類の風邪ウィルスが存在します。
ウィルス以外でも細菌性のもので溶連菌、百日咳菌、非定型病原体性としてマイコプラズマ、肺炎クラミドフィアなどもありますが、こちらはかかる割合は少ないです。
犬も風邪をひくのか
結論から先にいうと犬の場合も風邪をひきます。
犬にも風邪と同じ症状を伴うウィルス性の感染症があり、犬の場合では「ケンネルコフ」(犬舎の咳)と言われることもあります。
代表的なものとして、アデノウィルスⅡ型、犬パラインフルエンザウィルス、犬ジステンバーウィルス、犬ヘルペスウィルス、マイコプラズマなどがあります。
ただ、犬と人間では感染するウィルスの型が違うため、犬の風邪が人間に感染したり、逆に人間の風邪が犬に感染することはありません。
また、人間が普段よくひく風邪である、普通冒感(ライノウィルスやコロナウィルス)には犬は感染することはありません。
犬に比べると人間はよく風邪を引きます。それは口呼吸することが一番の原因だと言われています。
口から直接呼吸するとき、普段であれば「のどちんこ」がウィルスを撃退するのですが、「のどちんこ」が乾燥してくると免疫機能が十分に働かずにウィルスに感染しやすくなります。
犬の場合には、人間と違って口で呼吸することはなく、すべて鼻から呼吸します。鼻という空気清浄器を通して、加湿された空気が肺に送られるので、空気中のウィルスを死滅させることが出来、感染力の弱いウィルスが体内で増殖することを防いでいます。
このことから、犬は風邪をひきにくく、一般的に犬は風邪をひかないと言われるのはこのためだと思います。
犬の風邪症状を伴うウィルス性感染症のうち、アデノウィルスⅡ型、犬パラインフルエンザウィルス、犬ジステンバーウィルスについては、混合ワクチンで予防することができます。
この3種類に加えて犬アデノウイルスI型、犬パルボウイルスを含めた5種類をコアワクチンと呼び、すべての混合ワクチンに必ず含まれています。
また、犬ヘルペスウィルスについては生後1~2週間の子犬しか発症することがほとんどなく、成犬ではまずかかることがありません。
このように、元々犬はかぜをひきにくいことに加え、予防注射もしていれば、犬が風邪をひく確率をさらに低くすることができます。
犬の予防注射についての詳細については以下の記事にも書きましたので、よかったら参考にしてください。
《参考記事》 混合ワクチンは本当に年1回接種する必要があるのか
犬のかぜの予防方法
犬の場合でもかぜの予防には、体の免疫力を高めることが一番重要です。
免疫力を高めるために、以下のことに注意しましょう。
- 混合ワクチンを摂取する
混合ワクチンは毎年接種しなくても問題ないとのアメリカでの調査結果もありますが、2、3年に一回は必要なものです。感染症予防のためにワクチン接種してあげましょう。
- ビタミン類をたくさんとる
ビタミンAには免疫機能を維持し、粘膜や皮膚を健康に保つ働きがあります。ビタミンCは免疫力を高め、ウィルスなどへ感染を予防します。また、ビタミンCには抗酸化作用があるので、活性酸素による病気やガンを予防する効果があります。ビタミンAはレバー、たまごやかぼちゃ、ニンジンなどの緑黄色野菜にたくさん含まれています。ビタミンCは柑橘類、イチゴなどの果物や、ブロッコリー、さつまいもなどにたくさん含まれています。いつものごはんにちょっと追加してあげることで体調維持に役立ちます。犬は体内でビタミンCを生成することができるので、あえてビタミンCを与える必要はないとよく言われますが、風邪やその他の病気を予防するためには十分な量とは言えません。
特に極度のストレスがかかっていたり、ビタミンCを生成する肝機能が低下している場合などは、食事からの補給が大切になります。
- 腸内環境を整える
最近話題の腸内フローラのバランスを整えることで免疫力アップにつながります。 詳しくは以下の記事を参考にして下さい。《参考記事》 腸内フローラのバランスをとってアトピー、アレルギーを改善する
- 寒暖差、ストレスに注意
冬は特にそうですが、暖かい部屋から散歩に行くときなど、寒暖差が大きく変化すると犬もストレスを感じ、免疫力低下につながります。特に小型犬や寒さに弱い犬種の場合には、冬の散歩には服を着させるなどの対策をしてあげましょう。
- 寒さ、乾燥に注意
冬の時期は特に寒さと乾燥に注意が必要です。ウィルスは寒さ、乾燥に強く、感染力も強くなりがちです。また、空気が乾燥していると鼻やのどの粘膜の抵抗力が弱くなり、ウィルスに感染しやすくなります。
まとめ
犬は人間と比べるとかぜを引きにくい動物です。
人間がかぜをひいても、安静にしていれば2、3日で良くなることがほとんどですが、犬の場合は少し注意が必要です。犬の場合、普段かぜに感染しにくいため、一旦感染するとひどくなることが多いためです。
特に子犬や老犬の場合にはすぐに重症化することも多く、早めの治療が大切になります。
また、犬の平熱は38.5度ぐらいと人間に比べて少し高いため、発熱していても分かりにくいです。変な咳が続く、鼻水が出ている、元気がないなど、かぜの兆候がある場合には早めに病院に行くことをお勧めします。