以前から、なんどか「もなか」には、アスパラガスを与えたことがありました。
我が家では、それほどアスパラガスを食べることはないのですが、食卓にアスパラガスがあるとき、柔らかい穂先の部分だけを少しあげています。
この前、ネットで検索していると、アスパラガスには微量のアルカロイドが含まれているので、犬、猫には与えない方がよい、という情報がたくさんありました。
たまにあげているけど、大丈夫なのか?
アルカロイドとだけ書いているが、どんな成分が含まれているのか?
などなど、色々と疑問が湧き上がってきました。
今のところ、「もなか」はアスパラガスを食べて、特に体調が悪くなったということはありません。
犬がアスパラガスを食べると、本当に危険なのでしょうか?
真相はどうなのかと、少し真剣に調べてみました。
犬にとってアスパラガスは本当に危険?
ネットで調べてみると、危険という人と少量ならOKという2つの説がありました。また、危険という人の情報では、大体以下の2つが理由のようです。
- アスパラガスはユリ科の植物で、玉ねぎやニンニクと同じく、犬に与えてはいけない。
- アスパラガスには、アルカロイドが微妙に含まれているので、犬には毒となる。
この2つについて、それぞれできる限り調べてみました。
アスパラガスはユリ科?
犬の場合、ユリ科の玉ねぎやニンニクに含まれるアリシンという成分が特にダメだと言われています。そのため、ユリ科の植物はすべてダメだと思い込んでいる人も多いみたいですが、別にそんなことはありません。
調べてみたのですが、アスパラガスにはアリシン(ジアリルジスルフィド)は含まれていないようです。(どこにもそのような記載を見つけることができませんでした)
また、アスパラガスは本当にユリ科?なのかと思い、調べてみると、分類の仕方によって違うようです。
ウィキペディアによると、
アスパラガスはクロンキスト体系ではユリ科だが、APG植物分類体系ではキジカクシ科に属するとありました。
どうも、純粋なユリ科でもないようです。
ユリ科というと、犬、猫だけでなく、人が食べても危険だという情報をよく見聞きします。
確かにスズランや彼岸花などのユリ科の植物には毒を持っているものが多く、よく誤解されているらしいのですが、ユリ科の植物がすべて危険というわけではありません。ユリの球根であるユリ根などは食用として普通に食べられている食材です。
アスパラガスに含まれるアルカロイドとは?
こっちは調べてみても、よくわかりませんでした。
皆、一様にアスパラガスには微量のアルカロイドが含まれるので、犬にとっては危険だ、としか情報がありませんでした。
アルカロイドといっても、どんな成分が含まれているのか、また、どのぐらいの量を食べたらダメなのか、一切、文献を見つけることが出来ませんでした。
(以下のような獣医さんが書いているサイトでも、その根拠や分量は何も書いていませんでした。)
《参考サイト》 栃木県獣医師会 犬や猫が食べてはいけないもの
「微量のアルカロイドが含まれる」という表現だけ見れば、苦みのある野菜は大体アルカロイドを含んでいます。ただ、その苦み成分であるアルカロイドには、解毒作用など身体によい効果があることも多いです。
単純にアルカロイドを含んでいるから危険というのは、良くわからない論法です。
実際、アスパラガスで中毒になった犬が本当にいるのか、調べてみましたがそのような事例を見つけることが出来ませんでした。中毒になった事例があれば、もっとネットでウワサになっていてもよいはずだと思うのですが。。。
そもそも、アルカロイドとは何なのでしょうか?
ネットで検索してみると、”窒素を含む塩基性の植物成分の総称” らしいです。
???です。
これだけでは、何のことかまったくわからないので、もっと具体的にいうと、モルヒネ、コカイン、カフェインなど、動物の神経線維に入り込み、神経の伝達を狂わせて、毒性を発揮するものの総称だそうです。
モルヒネ、コカインなどというと、なんだかとても危ない成分のように思いますが、アルカロイドがすべて危険というわけではありません。
アルカロイドのひとつであるカフェインは、お茶やコーヒーに含まれる成分なのですが、カフェインは脳に作用して、疲労感や眠気を覚まし、集中力をマスことが知られています。人にとって、カフェインは摂りすぎない限り、特に危険な成分ではありません。
また、毒性の強いアルカロイドであっても、その毒性を弱めてお薬として利用されているものも多くあります。
元々、アルカロイドとは、植物が動物に食べられないように身を守るための成分なのです。
それは、果実がまだ熟していないときに動物に食べられてしまうと、子孫を残すことができないため、動物にとって毒となる成分を多く含むことで、自分の身を守っているのだと言われています。
そのため、アルカロイドは熟成する前の果実に多く含まれるのですが、果実が熟成するとその毒性が消えてなくなり、今度は動物に食べてもらうために甘くなったりもします。
まだ青い果実が渋くて苦いのは、このためです。
アルカロイドといっても、摂取する量が問題だということです。
それは、アルカロイドに限らず、どんな食べ物でも摂りすぎれば毒となることからもわかります。
例えば、生物にとってもとても重要であるはずの水や塩であっても、必要以上に摂取すると、死亡してしまうこともあります。
まあ、水の飲み過ぎで死亡することはあまりないですが、水も飲みすぎれば、体内の塩分濃度が低下することで水中毒となり、嘔吐や頭痛を引き起こします。特に汗を大量にかいたあとの水分補給には注意が必要です。
ということで、アスパラガスが犬にとって有害だという根拠は、見つけることができませんでした。要は、バカみたいにアスパラガスばかりを摂りすぎなければOKだと思います。
アスパラガスとは、どんな野菜なのか
アスパラガスは南ヨーロッパ原産の野菜であり、その歴史はかなり古く、紀元前から食用として栽培されてきました。ちなみに中世の頃には、貴族の間で痛風に良く効く薬草として、食べられていたそうです。
日本へは、オランダを通して江戸時代に既に入ってきていたようです。ただ、その頃は食用ではなく、観賞用として栽培されていたようです。日本でアスパラが一般的に栽培され、食べられるようになったのは、昭和になってからです。
アスパラガスは多年草の植物です。収穫した後も地中には地下茎が残っており、翌年にはまた芽が出てきます。収穫までには1年もかかり、2年から収穫できるようになります。
最近では、一年中、スーパーで売られているためアスパラの旬が分かり難いですが、春先から夏ごろまでがアスパラが一番おいしい季節となります。
アスパラガスの種類
アスパラガスとして、よく売っているのはグリーンアスパラガスです。ときたま、ホワイトアスパラガスという、少し値段が高い白いアスパラガスも売っていますが、この2つは実は同じ品種です。
太陽の光をたくさん浴びて育成させたものがグリーンアスパラガスであり、発芽後すぐに盛り土をして土の中で育てることで、太陽の光にあてずに育てたものがホワイトアスパラガスになります。
ホワイトアスパラガスはグリーンと比較すると、栄養価は落ちますが、食感が柔らかく、少し甘味もあることから食べやすいです。
その他にも、紫アスパラガスなど、ほとんど流通していない種類もあります。
アスパラガスを犬に与えるのであれば、栄養面と値段からグリーンアスパラガスが最適です。
アスパラガスの栄養とその効果
アスパラガスに含まれる特徴的な成分は「アスパラギン酸」です。
疲労物質である乳酸の代謝分解を促したり、その利尿効果から腎臓や肝臓の回復(デトックス)に効果があるとされています。
「アスパラギン酸」は茎よりも穂先の方に多く含まれており、野菜ジュースや健康ドリンクなどにもよく入っている成分です。
また、漢方薬としても用いられる野菜であり、身体の余分な熱を取り、解毒作用がある食材とされています。
その他にも、アスパラガスは栄養価の高い野菜であり、色々な効果が期待できます。
- ルチン
アスパラガスの穂先部分に多く含まれるフラボノイド色素の一種です。毛細血管の血行を良くすることで、高血圧や動脈硬化の予防に効果があります。フラボノイドとは、植物の色素や苦味、辛味成分のことで、ポリフェノールのひとつです。フラボノイドはその種類によって色々な効果があるのですが、その多くが強力な抗酸化作用を持っており、老化防止や生活習慣病予防に効果があります。 - βカロテン・ビタミン類
βカロテン・ビタミン類も豊富に含まれています。抗酸化力に優れ、免疫力アップやがん予防にも効果があります。通常、ビタミン類は加熱すると、壊れやすいのですが、アスパラガスは茹でても、これらの栄養成分が失われ難いという特徴があります。 - カリウム
カリウムは体内に必要不可欠なミネラルのひとつです。カリウムと塩分であるナトリウムはそのバランスを取ることで、体内の細胞膜の浸透圧を調整しています。また、カリウムは腎臓や肝臓の老廃物や過剰になったナトリウムを排出する働きもあります。 - クロロフィル(葉緑素)
アスパラガスの色素成分でもあり、コレステロール値を下げる効果があります。 - その他
茎の根元に多く含まれているサポニンは、ガンの増殖を抑制する作用やコレストロール値を下げ、肥満を防止する効果があると言われています。また、発ガン性物質の解毒にも効果があるセレンやグルタチオンという成分や、抗酸化作用が強いアントシアニンも含まれており、老化防止にも効果が期待できます。
このように、アスパラガスは疲労回復や老化防止、解毒にとても効果がある食材です。それは犬にとっても同じことであり、特に老犬にとっては動脈硬化やがん予防として、とてもよい食材となります。これを食べさせないのは勿体です。
ただし、犬に与える場合には、火を通したものを、できるだけ細かくしてあげると消化しやすくなります。
まとめ
如何でしたでしょうか。
今回、アスパラガスを取り上げてみましたが、ネット上に流れているウワサには根拠がないものや、曖昧なものが多いことがよくわかりました。私も、昔に書いたブログの中でアスパラガスは犬にNGと書いてしまっていました。m(__)m
アスパラガスについては、獣医でもある須崎先生の本にもオススメの食材として掲載されています。
実際、何度も「もなか」に与えていますが、今までも体調が悪くなったことはありませんでした。
今回、調子した限りでは、アスパラガスは犬にとって特に問題がないどころか、とても健康によい食材だと思います。ただ、どんなに素晴らしい食材でも、そればかりを大量に与えることはかえって毒となります。みなさんもその点だけはお気を付け下さい。