春の恒例行事、年一回の狂犬病予防注射-注意すべきこと

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先日、狂犬病予防注射の案内が県から来ていました。

狂犬病がいくら怖い病気だからと言って半世紀以上も日本国内で発生していない感染症に対して、いつまで予防注射を続けるのかと、毎年疑問に思っていましたので、少し調べてみました。

調べてわかったのですが、狂犬病について清浄国と言われているのは日本を含めて世界中でたった8カ国しかありません。

日本では普段話題にすら上らない狂犬病なのですが、世界で見ると狂犬病で毎年5~6万人も死亡しています。話題のエボラ出血熱での死者が合計で1万人程度なので、死亡者数だけなら狂犬病の方がよっぽど危険です。

アジアでは特にインドで感染者が多く毎年2万人も亡くなっており、次いで中国でも毎年2千人以上が死亡しています。ただ、中国の場合、報告さえされないことが多いようで実際には10倍以上あるとも言われています。

中国には元々人権などという言葉はないですが、犬に対してはもっとひどいです。下記記事では、去年も狂犬病対策のために犬が大量に処分されたとのことです。お隣の中国でまだこれだけ狂犬病の感染例があると、予防注射が必要なのも納得せざるを得ないです。

<参考記事> 中国南西部で狂犬病対策のため約5,000匹の犬を殺戮

ただ、いくら必要と言ってもワクチン注射にはリスクがつきものです。

混合ワクチン接種ほどではないにしても、狂犬病予防接種で毎年命を落とすワンちゃんもいます。予防接種後はワンちゃんの状態に十分に注意して、何か様子が変な場合にはすぐに病院に行けるようにしておきましょう。

狂犬病予防法とは

日本では、狂犬病予防法という法律で犬のオーナーに対して以下のことが義務付けられています。

  • 犬を飼い始めてから30日以内に管轄する市町村に犬の登録を行い、鑑札を交付してもらうこと
  • 鑑札を犬に着けておくこと
  • 毎年一回狂犬病の予防注射を受けさせること
  • 予防注射を受けたことを示す注射済票を犬に着けておくこと

狂犬病予防注射については、各自治体で毎年4から6月に集団予防注射を行っていますが、動物病院ではいつでも注射してもらうことが出来ます。法律では、上記の義務を怠ると狂犬病予防法違反となり、20万円以下の罰金に処せられます。

私も知らなかったのですが、注射済票を犬に着けておかないと法律違反になります。ただ、着けている人をほとんど見たことがないので、形骸化した法律のような気がします。

狂犬病とはどんな病気なのか

狂犬病は、狂犬病ウィルスに感染することで発症する病気で、ウィルスを保有する犬、猫やコウモリなどの野生動物に咬まれたり、爪でひっかかれることで、その傷口からウィルスが侵入して感染します。

狂犬病ウィルスは動物と人間の共通して感染するウィルス(ズーノーシス)で、発病すると100%死に至る恐ろしい病気です。そのため、診断した医者は直ちに保健所に届ける義務まであります。

狂犬病の症状

感染した動物にかまれた傷口から唾液を通してウィルスが侵入します。咬まれた傷は、痛みやひりひりする感じ、しびれる感じがあります。ただ、コウモリに咬まれた場合には症状がない場合もあるそうです。

ウィルスは神経を伝わって脳や脊髄に到達すると、中枢神経症状があらわれます。その後、ウィルスが脳から再び神経を伝い、唾液腺へ移動して唾液中からウイルスが検出されるようになります。

人間の場合、潜伏期間は10日程から数年の場合もありますが、通常は30から50日程度で発病します。咬まれた部分が脳に近いほど発症は早くなります。

発病すると、最初に発熱、頭痛、嘔吐、全身のけん怠感などの症状が見られます。多くの場合、落ち着きがなくなり、次第に錯乱や興奮状態となります。また、狂犬病ウィルスは脳の特定部分を冒すことで幻覚症状、不眠、発話困難、嚥下困難、呼吸困難などの症状が現れます。

脳が冒されることで、のどや喉頭の筋肉がけいれんを起こすのですが、かなりの痛みを伴うことがあります。また、水などの液体を飲もうとするとこの痙攣が誘発されるため、狂犬病が発症した人は水を飲むことができません。このため狂犬病は恐水病とも呼ばれます。

狂犬病には大きく2つのパターンがあり、狂躁型と麻痺型と言われてます。

狂躁型(きょうそうがた)

非常に過敏になり、興奮性の神経症状を伴い、狂犬病の特徴とされる恐水症状や恐風症状が見られます。動物では見境なく咬みつくようになり、発病後、数日で全身麻痺、呼吸困難などにより死亡します。

麻痺型

狂躁型に比べ症状は劇的ではなく、比較的長い経過をたどります。症状は咬まれた部分から筋肉が徐々に麻痺し始め、症状が進行すると昏睡状態に陥り死亡に至ります。人の場合、狂犬病の総数の約20~30%程度は麻痺型です。

もし、発病したら

犬の場合、狂犬病に感染すると1~2週間の短期間で発病します。

狂犬病を発病した犬は、むやみに歩き回ったり、咬みついたり、地面を掘ったり、遠吠えをするなどの異常行動をとります。また、唾液の分泌異常によりよだれを大量に流すようになります。

犬の場合でも水を飲むとのどがけいれんするため、極端に水を怖がるようになります。やがて、立つこともできなくなり、昏睡状態後に死亡します。

狂犬病の治療法

狂犬病の症状が発症した後は、有効な治療法がなく、ほぼ死に至ります。

ただし、感染している犬に噛まれても狂犬病が発症する前にワクチン注射をすれば、発症を防げます。

咬まれた直後に狂犬病ウィルスに感染したかどうかを検査する方法はありません。狂犬病が疑われる動物に咬まれた場合、すぐに傷を洗浄、消毒を行うことで体内への感染をなるべく防ぐことと、狂犬病を予防するために免疫グロブリンと狂犬病のワクチンを複数回受けることにより、狂犬病の発症を防ぐことができます。

日本では今のところ狂犬病の症例はないですが、中国などを海外旅行中に犬に咬まれた場合にはすぐにワクチンを接種しましょう。

狂犬病ワクチン予防注射の副作用

ワクチンは毒性を失わせた病原体を接種するものですが、ワクチン接種で副作用が生じる場合があります。犬の狂犬病予防注射の場合、副作用が出る確率はかなり少なく15000分の1程度ですが、場合によっては死亡する例もあるので十分に注意が必要です。

副作用には軽度ものから重度のものがあり、軽度なものは、発熱や食欲低下などの症状で1,2日で回復することがほとんどです。

また、じんましんとなる場合もあり、犬の場合には唇や目の周り、首の回りが腫れることがあります。重度の場合は、「アナフィラキシー反応」と呼ばれるアレルギー反応が出た場合で、呼吸困難に陥るなどして命を落とす場合もあります。

元々アレルギー持ちの犬の場合には特に気を付ける必要があり、ワクチンを接種することでアレルギー症状が悪化することがあります。

ワクチン予防接種をしたら

予防注射を接種後は犬の状態を注意深く観察する必要があります。

副作用が生じる場合にはワクチンの接種後、数分~数時間以内に反応が起こります。ワクチンを接種したら、犬の状態を注意深く観察するようにし、特に接種後1時間以内は経過を注意深く観察しましょう。

また、自宅に戻ってからも食欲がない、元気がない、吐いたなど、いつもと違う症状が出た場合にはすぐに病院に相談できるようにしておきましょう。

まとめ

今回、狂犬病についてを詳細に調べてみたのですが、思っていたより恐ろしい感染症です。その怖さからすると、予防接種が必要な理由もそれなりに理解できます。

ただ、ワクチンは100%安全なものではありません。ときには重度の副作用が出る場合もあるので、接種に際しては十分な注意が必要です。

 

日本では長年、狂犬病の発症例もないため、かなり形骸化した感じです。特に、狂犬病は犬だけ気をつけていてもダメで、猫やその他の哺乳類にも感染する病気です。

犬の狂犬病予防に関しては、法律で摂取を義務付けられており、毎年の予防注射では注射済票を入れて、3、200円もかかります。

狂犬病の予防接種頭数を考えると156.7億円もの規模になり、それなりのマーケットになっています。法律で強制的に接種を義務付けられていることもあり、固定した売上が見込めるマーケットとして関係団体の利権もかなり絡んでいるのでは、と勘ぐってしまいます。

※厚生労働省の平成25年度のデータでは、国内の犬の登録頭数は647.7万匹で、その内狂犬病の予防注射の接種頭数は489.9万匹、接種率は72.6%です。

 

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