アメリカがついに使用禁止、トランス脂肪酸はドッグフードにも?

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先週、アメリカの食品医薬品局(FDA)が食品への「トランス脂肪酸」の使用を2018年以降は原則禁止にすると発表し、話題となっておりました。

デンマークでは既に2003年から段階的にトランス脂肪酸を規制しており、デンマーク国内のすべての食品について油脂中のトランス脂肪酸の含有率を2%までに制限しています。また、アメリカでも2006年から加工食品について、トランス脂肪酸の含有量を表示する義務がありました。

一方、日本では「トランス脂肪酸」についての規制は一切ありません。なぜなのでしょうか?

当然、人間の食べる物でも規制されていないものがペットフードで規制されているはずもなく、消費者としてはドッグフードに「トランス脂肪酸」が含まれているのかどうかも、わからない状況です。

このような状況で少し気になったので、「トランス脂肪酸」について調べてみました。

味はおいしいが、健康には良くない「トランス脂肪酸」という油

昔から話題にのぼることも多いので、トランス脂肪酸という言葉を一度は聞かれたことがあるのではないでしょうか。

自然界でも、牛などの反芻(はんすう)動物の肉や脂肪の中に含まれている脂肪酸です。今問題となっている「トランス脂肪酸」は主にマーガリンやショートニングのような食用油脂を製造する過程で生成されます。

マーガリンやショートニングはおいしくて、安くて、日持ちする

マーガリンやショートニングにはたくさんのメリットがあり、近年、大量に生産され、食品業界で使われるようになりました。まずはそのメリットについてまとめてみます。

「トランス脂肪酸」(マーガリン、ショートニング)のメリット

  • 油として扱いやすい
    バター、ラードに比べて固形となる温度を自由に調節できることから、加工食品に使うときにとても扱いやすい油です。
  • サクサクと食感が良くなる
    ショートニングの名前の由来は、クッキーやパンなどをサクサクにすることから来ています。お菓子やパンの食感を良くするために使われています。
  • 何といっても安い
    バター、ラードに比べて植物油脂から生成される「トランス脂肪酸」はかなり安いです。
  • 酸化しにくい
    通常の植物油脂は酸化しやすいという欠点がありますが、物質的に安定しているトランス脂肪酸は酸化し難いという特性があります。

おいしくて、安くて、味も落ちにくいという理想的な油は食品業界から大歓迎され、あらゆる食品に使われるようになったのも納得できます。

「トランス脂肪酸」は健康に良くない

近年の研究で「トランス脂肪酸」を多く取り過ぎると、人間の体に様々な影響を与えることが分かってきました。

「トランス脂肪酸」のデメリット

  • 心疾患、脳こうそくのリスクが高くなる
    「トランス脂肪酸」によって、血液中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が増え、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が減るため、血管が詰まりやすくなります。
  • 体の細胞の老化を早め、がんになるリスクが高くなる
    血管が詰まることで毛細血管の流れが悪くなり、細胞の老化(酸化)を早める原因となります。
  • 認知症になるリスクが高くなる
    「トランス脂肪酸」をたくさんとっている人ほど、認知症になりやすいという医学学会の研究発表があります。
  • 免疫機能に異常をきたす
    「トランス脂肪酸」を多く取り過ぎることが、アレルギーやアトピーの原因となっていると言われています。

このように「トランス脂肪酸」の取り過ぎにより、様々な病気のリスクが高くなります。

日本ではなぜ「トランス脂肪酸」が規制されないのか

日本では特にバターの価格が高いこともあって、その代用品としてマーガリンがかなり普及しました。また、ショートニングはパン、ケーキ、ドーナツ、その他の菓子食品、さらには冷凍食品など幅広い食品に使用されており、日本人も「トランス脂肪酸」の摂取量が少ないとは言えない状況になっています。

農林水産省の下記ページでは、「トランス脂肪酸」の含有量の調査結果を公開しています。1%以上は危険と言われている「トランス脂肪酸」がかなりの食品に含まれていることがよくわかります。
《参考URL》 食品に含まれる総脂肪酸とトランス脂肪酸の含有量

「トランス脂肪酸」の危険性はかなり昔から問題になっており、欧米では徐々に規制の対象となってきていますが、日本では未だに「トランス脂肪酸」の含有量についての表示義務さえない状況です。日本では、「トランス脂肪酸」の平均摂取量が世界保健機関(WHO)の基準値よりも少ないことから、通常の食生活を送っていれば健康への影響は小さいという理由で食品に含まれる量の表示の義務を設けていません。

アメリカでも「トランス脂肪酸」を規制するにあたって食品業界からかなりの反発がありました。日本でも食品業界の力は強く、決定的な問題が起こらない限り面倒なことはしたくないという行政の怠慢もあって、なかなか議論さえ進まない状況のようです。

「トランス脂肪酸」はドッグフードにも使われている?

ドッグフードにどのぐらい「トランス脂肪酸」が含まれているのか、現状では正直わからないというが答えかと思います。

ただ、安いドッグフードは当然安い油が使われており、その危険性がかなり高いと考えています。

安いドッグフードの中には、フードの粒が油でコーティングされていることがあります。何の油なのか気になったことはないでしょうか。この油はドッグフードのカロリーをアップさせるためと、もう一つ犬の食欲を刺激する効果があります。

質の悪い安いドッグフードでは動物性タンパク質はほとんど入っておらず、小麦、とうもろこしなどの植物性タンパク質を主原材料としているため、犬にとってはおいしくない食べ物です。そのままでは、ドッグフードの食いつきが悪いため、犬が大好きな油でコーティングしているのです。この油には品質の悪い排油が使われることも多くあり、「トランス脂肪酸」が多く含まれているものもあります。

まとめ

「トランス脂肪酸」の問題はワンちゃんだけではなく、飼い主のみなさんの問題でもあります。

現代病と言われている、認知症、がん、脳こうそくなど様々な病気の陰にも「トランス脂肪酸」の影響がありそうです。ただ、現在の日本ではあらゆる加工食品に「トランス脂肪酸」が含まれており、避けては通れない状況です。実際、菓子パンでショートニングが入っていないものを探す方が難しいぐらいです。(一度パンコーナーで成分表示を確認してもらえばわかると思います)

「トランス脂肪酸」自体、元々肉類に含まれているものであり、完全に摂取しないなんてことは不可能です。ただ、少しでも摂取量は少ない方がよいことは確かなようです。

あと、個人的には、あまりにも安すぎるドッグフード(1kgで300円以下など)は止めた方がよいと思います。どう考えても犬の健康によいものだとは思えません。

みなさん、愛犬には元気で長生きしてもらいたいと、考えているのですが、なぜか愛犬の食べるものに無頓着な人がたくさんおられます。激安のドッグフードにどんな材料が使われているのか、考えてみて下さい。人間が食べて危険なものは犬が食べても危険なのです。

 

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