犬の不法投棄に見るペット産業の闇-殺処分ゼロに向けての取り組み

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去年は犬の不法投棄の話題がたくさん報道されました。

メディアでも一時期はかなり話題になったのでニュースを覚えている方も多いかと思います。これらのニュースを見てあなたも捨てられた犬が「かわいそう」と思われたのではないでしょうか。

 

まだ犯人が捕まっていないものも多いですが、犬の繁殖業者(パピーミル)が繁殖できなくなった犬や売れ残った犬たちを経費削減のために殺して不法投棄したのではと言われています。

日本のペット産業について、改めて考えさせられる事件でした。昔からこの手の事件は何回かあったようですが、去年から急に増えた原因は動物愛護法の改正による影響だそうです。

動物愛護法の改正によるブリーダーへ影響

「動物の愛護及び管理に関する法律」、通称動物愛護法が2013年9月に改正され、自治体が動物取扱業者からの犬、猫の殺処分依頼を断るようになったことが原因のひとつです。また、今回の法改正により犬、猫の販売については対面販売が義務付けられたため、地方でブリーダーとして繁殖を行い、インターネット販売をしていたような人は繁殖した犬の売り先がなくなってしまいました。

このため、ブリーダーの中には廃業にまで追い込まれた人も多く、繁殖した犬の処分に困った一部のブリーダーが犬を不法投棄したというのが実態のようです。繁殖に使えなくなった犬の処分問題は法改正以前からあり、心無いブリーダーは繁殖できなくなった犬たちを保健所に持ち込み殺処分していたと言われています。

以下のような流れです。

犬、猫の通信販売が禁止された
動物愛護法の改正で地方でブリーダーとしてやってきた人たちの中で、廃業する人が急増した
保健所が業者からの犬の廃棄依頼を断るようになった
今までは保健所に持ち込んで処分してもらっていた犬たちを安く処分できなくなった
結果として
犬の処分費用もなく、困ったブリーダーが山や川などに犬を廃棄した

空前のペットブームの陰で犬の販売をビジネスと割り切って金もうけの手段としか考えていないブリーダーやペット販売業者が多くいます。そのような業者からすると、利用できなくなった犬、猫は経費がかかるだけなので、処分してしまおうとなるわけです。

もちろん、中には良心的なブリーダーさんもたくさんいると思うのですが、今の日本のペット業界では生き残れないと思われます。

ペットブームの陰で殺処分されている犬たち

環境省のホームページでは行政による犬猫の殺処分状況を毎年公開しています。

平成25年度犬・猫の引取り及び負傷動物の収容状況

引用:環境庁公開資料

資料によるとここ20年ほどで犬、猫の殺処分数はかなり少なくなってきています。平成25年のデータですが、犬の場合で28,569頭、猫に至っては10万匹近くも毎年殺処分されています。

また、都道府県、指定都市別にも犬、猫の殺処分状況を公開されています。
犬・猫の引取り状況(都道府県・指定都市・中核市別)

かなり見づらい資料なので、都道府県での犬の殺処分率(持ち込まれた犬のうち殺処分された割合)だけに注目して整理してみました。
(なぜなんでしょうね。行政の資料ってどれもわざと分かり難くしているとしか思えません。)

25年度犬の殺処分率 ワースト順

1位:香川県(91.1%、2,352頭)
2位:山口県(82.9%、1,332頭)
3位:徳島県(79.3%、1,238頭)
4位:茨城県(73.9%、2,248頭)
5位:秋田県(73.7%、233頭)
・・・
43位:新潟県(12.8%、74頭)
44位:神奈川県(12.2%、158頭)
45位:北海道(10.8%、197頭)
46位:東京都(10.0%、81頭)
47位:長野県(4.5%、47頭)

※()内の%は犬の殺処分率(持ち込まれた犬のうち殺処分された割合)、
頭数は実際に殺処分された数です。

こうしてみると、行政として真面目に対応している県とそうでない県の差がはっきりと出ています。

私が犬なら香川県には住みたくないですね。香川県の場合、保健所に持ち込まれた犬は実に9割がそのまま殺処分されていることになります。

あと、殺処分ゼロをめざして「嫌われる行政になろう」と言っている熊本市ですが、熊本県でみると34位(48.6%)と意外によくないです。県としての取り組みまでには発展していないみたいです。

環境省も以下のようなプロジェクトを立ち上げたので、今後この状況ももう少し改善されるかもしれません。

<参考記事> 人と動物が幸せに暮らす社会の実現プロジェクト

まとめ

一時期は毎日のようにニュースになっていた犬の不法投棄ですが、その後、マスコミではそれほど取り上げなくなりました。(マスコミは視聴率が取れないことは報道もしないので、困ったものです。。。)

その影響もあってか、殺処分を無くすために色々と活動している方もいるようです。

<参考記事> 「犬猫の殺処分ゼロをめざす動物愛護議員連盟」設立総会

人間の身勝手な理由で殺処分される動物を助けてあげることにはもちろん賛成です。

手っ取り早く殺処分ゼロを実現することはとても簡単で、ペットショットでの生体販売を段階的に禁止すれば、それだけで劇的に殺処分が減るはずです。

最終的には、ペットショップをすべて潰してしまうぐらいの行政改革が必要だと思いますが、ペット産業は利権もかなりありそうなので行政指導では難しいのではないかと思っています。

ただ、個人的な意見として、ペットの殺処分ゼロなどと言っていること自体、矛盾だらけのきれい事に思えて仕方がないです。なぜ、犬、猫だけが殺されるとあんなに怒り狂う人たちがいるのでしょうか?

動物という意味では、牛や豚、ニワトリなど食用として飼われている動物は初めから食べるために育てられ、毎年何千万匹と殺されています。これら食用の動物たちは「かわいそう」ではないのでしょうか。。。

まあ、人間は生きていくために他の動物を食べていくしかないので、仕方がないことだと思いますが。

別に、牛や豚たちも、殺されるために生まれてきたわけではないです。

 

「もなか」も近所のペットショップで子犬のときに買ったのですが、当時はそれほど深く考えもせず、子犬はペットショップで買うものだと思っていました。このブログ記事を書くために色々調べたこともあり、ペットショップの実情が分かってくると、ショップで子犬を買うことが「悪」に思えてきます。もし、次に犬を飼うとしたら、もうペットショップでは購入しないでしょう。

それにしても、保健所に飼い犬を連れて行けば、殺処分されることがわかっているのに殺してくれとお願いする人の神経もよくわかりません。もし飼えなくなったのなら、最低限のマナーとして、誰か飼ってくれる人を探そうとは思わないのでしょうか。

あなたがもし、犬を新しく飼おうと考えているなら、ペットショップから購入するか、里親制度などを利用するか、一度考えてみてください。

ペットの里親コミュニティ「ペットのおうち」