今、ペット保険の契約件数が急激に伸びています。ここ最近のペットブームからペットを飼っている人の数が増えたことと、ペットを家族の一員として大事にする人が増えたことで犬、猫の医療費が高騰していることが要因です。
少し古い記事なのですが、ペット保険市場が急拡大 販売競争激化、採算との両立課題という日本経済新聞の記事の中でここ最近のペット保険市場について語られていました。
2013年度のペット保険の保険料収入は290億円と、過去3年間で倍増しており、急成長しているペット保険市場に対して色々な異業種からの参入が相次ぎ競争が激化しているとの記事(会員専用)です。
- あいおいニッセイ同和損害保険による「au損害保険」の参入
- T&Dホールディングスによる「ペット&ファミリー少額短期保険」の買収
- 外資でもアクサ損害保険の参入
- 地盤改良工事が本業であるハイスピードコーポレーションによる「あんしんペット少額短期保険」
- エネルギー事業を展開する高松産業株式会社による「イーペット株式会社」
- 総合スーパー大手のイオンの傘下にある「イオン少額短期保険」
とここ数年でペット保険を扱う会社がどんどん増えており、ペット保険に入ろうと考えている人にとっては選択の幅が増え、良い傾向にあります。
ただ、逆に言うと選択の幅が増えた分、どれに入ったらよいのかと悩んでしまいます。 そんなとき、ペット保険を比較する基準としてペット保険会社の財務状況を見てみるのも一つの方法かと思い、まとめてみました。
競争が激化するペット保険業界
確かにペットの寿命が延びたことに伴い、ペットにかかる医療費も毎年うなぎ上りに高くなっています。
一方で日本国内ではまだまだペット保険への加入者は少なく、これからの成長市場ということでこれだけの会社が相次いで参入してきたのも理解できます。 ただ、まだまだ市場規模としては大きくないパイを各社で奪い合いになれば、採算の悪化から経営が厳しくなる企業も出てきてもおかしくありません。
それでなくてもここ最近のペット医療費の高騰により保険会社の収支が悪化していると言われており、各社では保険契約の見直しが進められている状況にあります。(アニコム社は2014年11月から前年の通院回数によって次年度の保険料が割り増しになります。既存の契約者からは契約条件の改悪だと言われています。)
ペット保険を契約する会社の選択を間違えば、最悪の場合、その会社が倒産するかもしれません。また、倒産まではしなくとも採算悪化で保険の契約条件を改悪されてしまうかもしれません。ペット保険を選ぶ場合、契約条件だけに気を取られがちですが、人間の生命保険と同じく保険会社の経営状況を把握していないと危ない時代になってきました。
少額短期保険会社と損害保険会社の違い
そもそも、日本でペット保険を扱う会社には「損害保険会社」と「少額短期保険会社」の2つの種類があることをご存知でしょうか。
昔は国の許可なしに共済組合などがペット保険などを引き受けることができたため、無許可共済という保険が多くありました。しかし、悪質な業者も多く、共済組合の破たんなどにより保険契約者の被害が多くなってきたのを受けて、2006年4月に保険業法が改正されてできたのが、少額短期保険会社です。
保険業を扱う会社のうち、事業規模が小さい会社が該当し、保険金額の合計額が1,000万円以下で、契約保険期間が1~2年に限定されています。また、少額短期保険には、生命保険や損害保険のように、会社が倒産した時に契約者を保護する機構「契約者保護機構」が無いため、かけた保険料や保険金が保護されません。
ペット保険会社の収支状況とソルベンシー・マージン比率
ソルベンシー・マージン比率とは保険業法で定められた保険会社の健全性を示す指標であり、保険会社の支払余力を表す比率です。
通常、保険契約者に対する支払金額は統計的な計算によってある程度予測されていますが、予想外の大規模損害が発生した場合での支払余力を表しています。
金融庁からは200%以上あることが求められており、200%を切ると早期是正措置が勧告されます。
調べてみると、少額短期保険会社では決算収支状況が良くない会社(決算公告をホームページに載せていない会社もある)やソルベンシー・マージン比率が公開されていない?会社も多く、保険契約者に対して良心的な態度とは言えない会社も多いです。(決算公告は会社法で株式会社に対して義務づけられているはずなので、どっかで公告しているのか?)
また、各社の決算内容を見ても赤字の会社が多いことに少しびっくりしました。会社設立間もないという会社も多いことから、ある程度は仕方がないかと思いますが、3期連続赤字となるとその会社はいつ潰れてもおかしくない状況です。
ただ、小さい会社はわざと決算を赤字にして税金を取られないようにすることもあるため、決算内容を精査しないと正確なところはわかりません。
あと、ペット保険最大の大手であるアニコムでさえ、ソルベンシー・マージン比率がそれほど高くないのは意外でした。アニコムは2006年設立とかなり若い会社であり、まだ設立10年程なので内部保留資産もそれほどないのだと思います。
ただ、正味損害率が62.8%とかなり高いことから収益率もよくありません。各社とも利益率はかなり悪いようで純利益がかなり少ないです。これでは各社が保険契約の見直しや保険金の支払いを渋るのも当然な状況かと思います。
保険会社 | 種別 | ソルベンシーマージン比率 (%) | 会社状況 | 財務状況(※) |
アニコム損害保険 | 損害保険会社 | 295.1 | 契約件数、経常利益ともに増加しているが、純利益が少ない。保有契約件数50万件、保険収入180億円。未配当である。 | ○ |
アイペット損害保険 | 損害保険会社 | 276.4 | 契約件数、経常利益ともに増加しているが、純利益が少ない 。保有契約件数15万件、保険収入50億円。 | ○ |
au 損害保険 | 損害保険会社 | 430.2 | 過去2期は赤字。赤字幅は少額。2014年にペット保険に参入したばかり。保険収入44億円。あいおいニッセイ同和損保とKDDIが親会社なのでバックは安心? | △ |
ペット&ファミリー少額短期保険株式会社 | 少額短期保険会社 | 683.6 | ずっと赤字。保険収入18億円。T&Dホールディングスグループなのでバックは安心? | △ |
日本アニマル倶楽部 | 少額短期保険会社 | 不明 | 過去2期は赤字であったが、前期は黒字転換。純利益少ない。保険収入12億円 | △ |
ペットメディカルサポート | 少額短期保険会社 | 不明 | 過去3期連続赤字。保険収入3億8千万円。 | × |
楽天少額短期保険 | 少額短期保険会社 | 557.5 | 純利益少ないが安定した黒字経営。保険収入12億円。 | ○ |
FPC | 少額短期保険会社 | 不明 | 決算公告なし? | ? |
ペッツベスト少額短期保険 | 少額短期保険会社 | 208.5 | 平成25年9月末において、一時ソルベンシー・マージン比率が 200%を下回る、過去3期は赤字。保険収入2億1千万円。 | × |
ガーデン少額短期保険 | 少額短期保険会社 | 不明 | 過去2期は赤字。保険収入1千1百万円。 | × |
あんしんペット少額短期保険 | 少額短期保険会社 | 不明 | 決算公告なし? | ? |
イーペット少額短期保険 | 少額短期保険会社 | 不明 | 決算公告なし? | ? |
イオン少額短期保険 | 少額短期保険会社 | 593.7 | 会社設立以来8期連続赤字。保険収入3億円。バックはイオングループなので安心? | △ |
※財務状況はあくまで私の個人的感想を○、△、×で表しただけです。正確には各社が開示している決算情報を参照してください。
まとめ
ペット保険会社の財務状況を調べてみて思ったことは、やはり大手のアニコムはIRもしっかりしており、安心感が違いました。(その分、保険料が高いですが(^_^;))
あと、少額短期保険会社に多かったのですが、Webページで決算公告も開示していないような会社もありました。個人的にはそのような会社は信頼できないので、契約はしません。
また、同じ少額短期保険会社であっても会社規模にかなりの差がありました。同じ契約条件なら会社規模が大きい(保険収入が多いもの)ものか、そうでなければバックがしっかりしている会社を選んだ方が倒産のリスクは少なくなるかと思います。 各社の財務状況を確認することもペット保険を選択する際のひとつの指標にはなるかと思いますので、ぜひ参考にしてください。