少し前のニュースになりますが、1歳までの子供のときに動物と触れ合う機会が多い方が、その後喘息になり難いというスウェーデンの研究結果が発表されていました。
《BBCニュース記事》 子どもの頃に犬を飼うと、ぜんそくリスクが低下と
このニュースによると、0歳から1歳までの間に犬を飼っていた家庭で育った子供は、7歳の時点でぜんそくになる可能性が13%も低く、さらに多くの動物がいる農場で育った子供たちでは、喘息の発症リスクが50%も低いことが分かった、とのことです。
幼い子供のときからアレルゲン(アレルギーの元となっているもの)に接触する機会が多い方が、免疫機能が正常に発達するという結果です。
このニュースを読んで、やっぱりそうかと思いました。最近の日本では、なんでも除菌、除菌とコマーシャルしていますが、思わぬところでその弊害が出ているようです。
アレルギーの治療法である減感作療法と同じ?
アレルギー性鼻炎や喘息の治療にも使われる減感作療法という治療法があります。
これは、アレルゲンとなっている物質を少しずつ体内に入れることで、徐々にそのアレルゲンによる体の過敏な反応を減らしていく治療法です。
これと同じような原理で、幼いときからアレルゲンとなり易いものに触れていることで、体が異常反応を起こすことが少なくなるようです。
減感作療法とは、
動物の体には、細菌やウイルスといった外敵が体内に入ってきたときに、これらの外敵から体を守るために免疫機能が備わっています。この免疫機能が何らかの理由で過剰に反応しすぎてしまうことをアレルギーと言います。
本来であれば、特に攻撃しなくてもよいものに対してまで過剰に反応してしまうのです。
このような体の勘違いを起こさなくするため、アレルゲンとなっている物質を敢えてほんの少しずつ体に入れることで、徐々にこの物質は問題がないと、体に覚えさせる療法です。
すべての患者に対して効果があるわけではないですが、大多数の人で症状を改善させ、うまくいけばアレルギー体質を完治させることもできます。
世界的なアレルギー疾患の増加
食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、ぜんそく、アレルギー性鼻炎など、アレルギー性の疾患は色々とありますが、このアレルギー性疾患を持っている人の数はここ4、50年で世界的に急増しているのです。
人によってアレルギー症状の出方は様々であり、その原因や程度にもかなりの差がありますが、今では、子どもたちの約半数は何らかのアレルギーを持っているとも言われています。
私が子供のときにも、ぜんそく持ちの子たちはチラホラといました。ただ、今のように食物アレルギーがひどくて、給食もまともに食べられないという人はほとんどいませんでした。今の子供たちのアレルギーの多さにはびっくりするぐらいです。
また、最近の日本では、花粉症の時期にみなが一斉にマスクをする様をみても、アレルギーを持っている人の数は確実に増えていると思います。
アレルギーの原因はきれい過ぎる住環境にもある
ここまでアレルギー体質の人が増えてきた原因は色々なことが言われていますが、そのひとつとして、子どもたちが育つ生活環境が挙げられています。
一般的にアフリカやインドなどの発展途上国では、アレルギー疾患を持っている人の割合はかなり低く、先進国の方が圧倒的にアレルギー疾患の割合が多くなっています。これは、幼いときから色々な細菌に感染することで、その子供の免疫機能が正常に発達するからだと言われています。
このことは、発展途上国の飲み水をみてもわかります。私たち日本人が旅行に行った際に、現地の水道水は絶体に飲むなと言われます。これは、水道水を飲むとひどい下痢になるからですが、同じ水道水を現地人が飲んでもまったく平気です。彼らには水道水に含まれている細菌に対する免疫ができているからです。
逆に言うと、普段私たちが飲んでいる日本の水道水は雑菌などが含まれていない、きれいな水だということです。
また、最近の日本では、一昔前までとは考えられないぐらいに住環境が清潔になっています。少しでも汚れているとガマンができないという、潔癖症の人も異常に増えています。親が潔癖症の場合、その子供たちも幼少期から雑菌にさらされる機会も少なく、このことが正常な免疫機能の発達を妨げる原因になるとも言われています。
衛生的できれいな住環境では、快適な生活ができる一方、あまりにもきれいすぎる環境は、私たちの体には合っていないのかもしれません。
先に紹介したスウェーデンの調査結果でも、犬を飼っている家庭の方がアレルギー疾患を発症する子供が少ない、という調査結果でした。
これは、犬を飼うことで、幼少期に適度にほこりや雑菌にさらされることで、子供たちの免疫機能が正常に発達するという「衛生仮説」を裏付ける結果となります。
衛生仮説とは、
兄や姉がいる子供の方が、統計学的にアレルギー疾患になり難いと言われています。
これは、弟や妹たちは、その幼少期に兄姉を通して色々な細菌に感染する機会が増えるためと考えられております。この統計学的な結果から、生活環境の衛生状態がアレルギー疾患に関係するのでは、という仮説を立てたことで「衛生仮説」と呼ばれています。
まとめ
今回のスウェーデンの研究結果では、幼いときから犬を飼っている方がアレルギー体質の予防にはよいという結果でした。この結果は大変興味深いもので、衛生的に汚い方がアレルギー体質にはなりづらいという、逆説的な結果です。
一般的に、妊娠中や幼い子供がいる家庭でペットを飼うことは、衛生上からあまり良くないと言われています。特にアレルギー体質の両親の場合には、躊躇することも多いかと思います。
明らかに犬アレルギーの人が犬を飼うことは、お勧めできません。ただ、犬を飼うことにはアレルギー対策以外にも色々なメリットもあります。特に小さいお子さんにとっては、その子の成長のために良い影響を与えると思います。
《参考記事》 「まだ犬を飼っていない人はぜひ飼うべきである」5つの理由